話題の新型車 「セレナ」と「NSX」から見える日産とホンダの未来

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話題の新型車 「セレナ」と「NSX」は両社(日産とホンダ)の未来にどのような影響を与えるか?

時期が同じくして2台の新型車が発表された。1台は日産自動車の「セレナ」、もう1台がホンダの「NSX」だ。

セレナはミニバンで始めて自動運転技術「プロパイロット」を搭載し、NSXは、「SPORT HYBRID SH-AWD」を搭載したモデルだ。両者とも、技術的な、またはそれ以外の理由により今年最大の話題となる車となるだろう。

この「セレナ」と「NSX」は日産とホンダの両社の未来にどのような影響を与えていくのだろうか?

この話題はタイムリーすぎて、また予想の混じった内容を書いてしまうので、少々書く事を迷った部分もあるが、とても興味深いトピックのため少し書いてみたい。

昔と比べて存在感がとても薄くなった日産とホンダ

昔は日本の自動車メーカーといえば三強のイメージ(トヨタ・日産・ホンダ)だったが、現在では一強(トヨタ)となってしまい、日産とホンダは影が薄くなってしまっている。

セレナであってもNSXであっても、それらの新製品から強く受ける印象は両社の「焦り」だ。日産は国内市場においてそれぞれの車種セグメントの上位に立てるような車、(特にコンパクトカー・普通車等において)を全く作れなくなっているし、対するホンダは軽自動車を始めとするコンパクトカー、またはミニバンの会社にダウンしようとしている。(参考記事:車選びの参考に!日本車で予算別に面白い車・コスパの高い車・個人的に欲しい車を考えてみた。

日産については「何が何でも売れる車を作りたい」という想いがあるだろうし、ホンダにとっては、「単なるコンパクトカーとミニバンの会社」とは思われたくないと言う強い思いがあるのかもしれない。そこで生まれたのが日産の「セレナ」とホンダの「NSX」なのではないだろうか。

セレナは日産を救い、ホンダはNSXでますます先に迷う?

私が両者の新型車発表をして第一印象で思ったのが「セレナは日産を変える車になるだろうが、NSXはホンダを変える車にはならないかもしれない。」というものであった。

その理由について以下に書いてみたい。

新型セレナは日産の危機感が生み出した稀にみる名車になる?

新型セレナを見ていると作り手、そして日産自動車の本気度合いをひしひしと感じるものだ。「やっちゃえ!」的な軽いノリではなく、もっと重い「必殺」的なものだ。

そのとおり、セレナというエルグランドよりも安い、価格にして300万円を切るミニバンに、シーマやフーガにも積んでいないような最新鋭の自動運転技術を積み込んでしまった。この自動運転技術(プロパイロット)についても、もちろん部品サプライヤーから安易に調達したやっつけ仕事などではなく、日産が莫大なコストと年月をかけて開発した将来の完全自動運転につながる独自技術だ。

この技術(プロパイロット)などを開発するために、この新型セレナは日本国内を20万キロ以上走行してテストするという手間をかけている。「良い車」は、公道での実走テストを相当にしているというセオリー通り、20万キロ以上の公道(日本のすべての高速道路等)をテストしたというセレナの製品自体の作りは、相当に良い車であることが試乗しなくてもわかることだろう。

このセレナは、稀にみる名車となる可能性を持っている。予測ではあるが、このセレナはプロパイロットを核にして爆発的に売れ、日産の収益のみならず、今後登場してくる日産のその他車種にも影響が派生することだろう。

アイサイトでスバルが復活したように、プロドライブで日産は復活するはずだ。ついに日産は「やっちゃった」のだ。

最近のカスタマーは知っている

セレナの発表会でプロドライブ搭載車の想定を40%としていたが、本当に日産がそう考えていたならば、言葉が汚いが、本当にばかげている。(理由は以下で説明したい。)実際の予約注文実績のとおり70%、今後ますます注目が集まると80%以上くらいまで成長する可能性があるのではないだろうか。

このプロドライブ技術は、本来シーマやフーガなどの高級車に最初は使われるべきものだ。それを300万円弱の中型車のセレナに搭載してしまった。その時点で日産は「やっちゃって」いるのだ。

最近のカスタマーの目は鋭い。そのことももちろん見抜いているだろう。そのようなことから、先ほどのようにプロドライブ車の販売比率を40%前後とみていたならば日産はカスタマーの目を甘く見過ぎだ。(そのような意味で「ばかげている」と書いた。)

このようにセレナは、ミニバンと高級車との関係を日産内で崩すほどの本気を見せたモデルだ。これが販売上悪い方向にいくはずもないだろう。

違和感と今後の迷走を予感させるNSXとホンダ

対するNSXとホンダについてはどうかと問われると、感じるのはNSXのもつ違和感と、ホンダの迷走がこれからも続きそうな予感だ。このNSXに感じる違和感は何かがおかしいと感じさせるものだ。

何がおかしいのだろうか?

NSXの2370万円という価格が持つ違和感

NSX、またはホンダの何がおかしいかというと大きな問題の中心は、このNSXの2370万円という価格にあるだろうと思う。これが現在のホンダの考えやあり方を表すものだろう。

2370万円と聞くと多くの人が(どちらかというと良くない意味で)驚いただろう。レクサスのLFAを除くと日本車の中では最も高い価格帯だ。日産の「GT-R」を超えてだ。

ホンダは「コストパフォーマンスを追求する」という努力を捨てたという見方

高い金額を設定すればどの自動車メーカーでも良い車は作れる。すべて高いパーツで金額の制約などなく車を組み上げれば良いからだ。

しかし、自動車メーカーの価値とはそんなところではない。限られた価格の中で最も良い車を作り、心からほしいと望むカスタマーに、1台でも多くその車を届けられるメーカーが価値の高い自動車メーカーだと思う。その点では、ホンダはNSXを作るにあたって努力していないことになる。

ホンダがコンパクトカーのメーカーになりつつあるのは、軽自動車の世界やコンパクトカーの世界ではその点で頑張っているものの、それ以上のクラスではその努力が感じられないことにあるのではないだろうか。

NSXには日産のGT-Rのようなコストパフォーマンスの良さを感じることができない。

NSXの未来

NSXの販売後の未来もなんとなく想像ができるような気もするだろう。

当初は、NSXも短期間でさばききれないようなオーダーを日本でも抱えるだろう。「納車まで数年」のようにだ。しかし、これは半分は演出チックだ。生産台数をあえて絞って、「演出」していると言われてもしょうがない。

数千万円もホンダに出してくれる素晴らしいカスタマーを数年間も待たせることに対しても大きく違和感を抱くところだ。多くのカスタマーはその辺へんも見抜くだろう。住宅だったら、他の会社へ乗り換えるかもしれないレベルだ。

また、2000万以上の車を買うためにホンダのディーラーに出かけ、軽自動車の商談をしている人と同じように商談をし、いよいよ納期のところで数年ですといわれた時点でそのお金持ちはどうもだろうか?「ああ、もういいよ。」だろう。

もちろんホンダディーラーのことや軽自動車を買う人を悪く言っているのではない。(もちろん私もディーラーに行き軽自動車を購入している軽自動車オーナーである。)ここで伝えたいのは、販売体制も含めたすべての準備や努力が今のホンダには不足しているように思えるのだ。NSXという車を売る体制の不備・努力不足だ。

レクサスのLFAはレクサスディーラーだから買うのだし、日産のGT-Rは日産ディーラーだから買うのだ。GT-Rにして2台分の価格の車を現在のホンダディーラーで買えるだろうか?

多くの人は、もっと早く納期の面で手に入る911ターボをポルシェディーラーから買うことだろう。または、コストパフォーマンスに優れた日産GT-Rを日産ディーラーで買うことだろう。

そういった理由から、ホンダのNSXが爆発的なヒットを日本で達成できるとは考えづらい面がある。

まずは性能とコストパフォーマンスでGT-Rを圧倒すべきだ

このようにNSXには、コストパフォーマンスに対する意識があまり感じられないところがあるが、逆にコストパフォーマンスに優れる車だったら大いにヒットした可能性もあるのではないか。

具体的には、最も身近なライバルとなるGT-Rにまず速さで勝つことだ。そして、もちろんのこと価格においても勝つのだ。ポルシェやランボルギーニ、フェラーリに戦いを挑むのはその後でも決して遅くない。

NSXのプレミアは先代のようにはつかない?

そもそも新型のNSXは、色々な要因によりプレミアがつきにくいモデルだろうと思う。その点では、レクサスのLFAの戦略はとても巧みであったと思う。

レクサスのLFAの場合、販売台数を限定していたからだ。NSXもプレミアを高め続けたいのであれば、販売台数を制限するべきであっただろう。それであれば少々コストパフォーマンスが悪くても熱狂的なファンによりプレミアを維持できたはずだ。

現状ではNSXは細々と売り続ければ続けるほど、プレミアは下がる方向に働くし、ホンダもこの車の引き際(販売停止のタイミング)の判断も難しくなるだろう。

先代のNSXは、発売から長期間が経過したモデルであっても高値で取引されているというプレミアがついているが、この新型NSXではそれも難しいかもしれない。電池やモーター、センサーなどのハイテク電子デバイスが満載で、家電やパソコンのようになってしまっているため、シンプルな構造の車のように長期間維持していくことが難しいことも考えられるためだ。

パソコンやスマホなどの電子端末は安い物を短期間で乗り換えていく方がその技術進化の恩恵を受けやすいが、車もハイテク化でそのようになりつつあるのかもしれない。パソコンやスマホがアンティークのコレクターの対象とならないようにハイテクカーもコレクションの対象とする事は今後難しくなるのではないだろうか?

日産とホンダの未来を分けるもの

このように考えてみると、日産とホンダの未来を分けるだろうものは、実は共通していることに気がつくだろう。

その共通しているものとは、製品の持つ「コストパフォーマンス」だろう。高級車とのバランスを崩してでも死に物狂いでセレナのそこにこだわった日産と、販売体制などを十分に準備することなく、またはコストパフォーマンスを意識することなく、会社が作りたい超高級スポーツカーを独りよがりで作ってそれを売ろうとしているホンダ。なんとなく両社の今後も見えてきそうな感じだ。

私は日産もホンダも両社とも好きだ。レジェンドなんて本気で欲しいと思っていたりもする。(参考記事::レガシィの次の車の話(空想) スバル車以外ではどの車がいいか?)また、オデッセイもトヨタのアルファード・ヴェルファイアとコストパフォーマンスで勝てる素晴らしい車だ。(参考記事:ヴェルファイア・アルファード、エルグランド、オデッセイ 3ミニバンの独自ランキングを考えてみた

これまで書いてきた内容は、あくまでも個人的な感想にしか過ぎないが、日産のものについては当たってほしいし、ホンダのものについては外れてほしいと心底思う。

色々言ってはいるが、NSXについてもいつか乗ってみたいし、コストパフォーマンスに優れるホンダのバリバリのスポーツカーが発売されたならば、無理をしてでも絶対に買ってみたいと考えている一人だ。




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